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ディズニーシーで子供に返って(ミラコスタ)<2>

   駅の改札口みたいなのを通っていよいよパークへ。季節は春だというのに、初夏のように暑い。太陽がまぶしい。すでに人はうじゃうじゃで、あちこちに、黒やまの人だかり。インフォメーションボードを覗くと、センター・オブ・ディ・アース 180分、海底2万マイル120分・・・。え?待ち時間がこんなに?。呆然。
    10分しか待つのに耐えれない我が一行は、とぼとぼと歩き出す。確かにお天気は良い。確かに休日の前ではある。確かに世の中は受験の季節を終えた(しかし、平日だぜ!)。しかし、これらはどうやら普通の状況らしい。日本人はいつから並ぶ民族?になったのだろう。食料不足のご時世ならいざしらず、行列=価値ありと世論に流されるまま受け容れ、自分も並んでおけば安心と、安易に列に加わる。自分の判断はどこに行ってしまったというのだ!と、いくら憤っても、じゃあお先にどうぞ、なんて言ってくれる人はいない。思い切って15分並んでジュースを買った(食料を手に入れるのも命がけだ)。
    結局1140人一気に収容してくれる(ので並ばなくてもよかった)ミスティックリズム(水、命、大地、火などの精霊たちの踊りと音楽のショー)を前の席で見て(何故か後ろの席からつまっていく。最後に分ったことは、前にいたら、水がかかってびしょびしょになるということだった)、きっちりびしょびしょになって堪能した。飛行機の格納庫を改造したというその建物は、徹底して細部まで、まさしくそのイメージ通りで、庭にはきちんと古い飛行機まで置いてあった。これがディズニー流こだわりなのかな。

    まさしく港町の風情で、蒸気船、帆船、ゴンドラなどが行き来する。中央にはプロメテウス火山が噴煙をあげている。ベンチに座って、ゆったりと眺めると、風が爽やかに吹き抜けていく。20分並んで買ったカプチーノポップコーンがおいしい(1時間半待ちのギョーザドッグは、やっぱり買えない)。

    午後3時。予約していたプレミアムツアーの時刻になった。1グループ(10人まで)に1人ガイドさんがついて案内してくれるツアーで(ガイドさんは別にいらないのだけれど)、ファーストパス対応のアトラクションに、待たずに乗れるという特典がある。1グループで1万5千円は安くはないが、延々と並んで待つことを思うと、霞を食べても待つのはいやだタイプが、他に生き残れる道はないのだ。
    短大を出たばかり、といった風情のかわいいガイドさんが、ミッキーマウスのシールを胸に貼ってやってきた。右回りでいくか左回りでいくか、みたいな簡単な打ち合わせの後、私たちは歩き出した(やっぱり歩くのね)。センター・オブ・ディ・アース。180分待ちの列の横を通り抜け、さらに、ファーストパスを持って並んでいる人の列を抜け、なななんと、スタッフ専用通路から侵入? ほら、話題の人が、マスコミを避けて、裏口から出て行ったりするでしょ? あの感じ。ものの5分で、このアトラクションを制覇してしまった。うーーん、匠の技というべきか。
    ツアーの特権と特典をフルに活用しながら、進んでいく。お姉さんが、この町は1870年代の南太平洋に浮かぶ島だとか、1930年代の中央アメリカとか、詳しく解説してくれる。私たちは並ばずにアトラクションを堪能できるのが嬉しくて、素直に、はい、はいと返事を返す。彼女は、秘密を告白するように、ここだけの話なんですけど・・・。私たちもつい声を潜めて、はい? ” 私、ミッキーマウスの大ファンっていう訳でもなかったんです。でも、ここで働くようになって、ディズニーの世界の奥深さっていうのを、しみじみ感じるんですよね・・・。” 私もそう思うよ。ミッキーマウスには、人を包み込んでしまう寛容と愛と、夢があるよねー。
    ブロードウェイ・ミュージカルのナンバーにのせた歌とダンスのショー『アンコール』を特別席で見た後、お姉さんは、おもむろに、バッグからミッキーマウスのピンバッジを取り出して、このツアーに参加された方だけに差し上げるオリジナルなんですよぉ、とにこにこしながらプレゼントしてくれた。

TEXT/椎名 まこ
E-mail : nagi@nagi-web.com