かくして山本耀司先生から決勝戦のチケットをありがたく拝領し(ロシア戦と決勝戦との両方をいただくほどの神経は持ち合わせていない)、サッカーを愛する友人がたまたま?持っていた日本対ロシア戦のチケットを、たまたま??用事があって行けないというので譲り受け(ご本人へ・・・決してプレッシャーをかけた訳ではないよね?)、日本中が熱くなる6月、二度に渡る横浜遠征に出立することになるのである。
さて時は6月4日、日本代表は、初戦ベルギー戦で善戦し引き分け、勝ち点1を得た。翌日は 『85分の稲本のシュートは絶対、ファウルじゃないよね!』 と会う人毎に話題になり、日本中のワールドカップへのコンセントレーションが徐々に高まっているのを肌で感じた。次はいよいよロシア戦。負ける訳にはいかない。 6月9日、16時、横浜駅には蒼き軍団が続々と終結し、新横浜駅で一気に外へ溢れ出す。NAKATAがいたり、ONOがいたり、時には、NAKAMURAや、TAKAHARAもいる。嬉しいことにKAZUもいる。たくさんのボランティアの方々、おまわりさんが、案内板を持ち、拡声器を持ち、誘導してくれる。WANTED TIKET!(チケット譲って!)のプラカードを掲げて声を張り上げている人も。街の中を抜け、丘陵地にはいると、さまざまなグッズを売っている人に出会う。ユニフォーム、帽子、国旗、Tシャツ、タオル・・・。フェイスペインティングをしてくれる露店もある。
競技場のゲートに近づくと急に歩みは遅くなる。厳しい手荷物検査に時間がかかって、入場するのに長蛇の列ができているのだった。しかし誰も文句は言わず、まさに始まろうとしている世紀の決戦に、期待と興奮で、顔を赤くして大声で論じ合っている。あちこちでにっぽん!コール。それに応えて、またどこからか、にっぽん!ちゃちゃちゃ。少ないながらもロシア人もいて、こちらはこちらで、でかい旗など振りながら叫んでいる。どちらも負けてはいない。が、険悪な雰囲気はない。お互いに相手にきちんと敬意を払い認めつつ、正々堂々と勝負だ!の意気込みに溢れた前哨戦だった。
18時50分、選手たちの練習。シュート練習では、中田が、ボヨヨーーーンと枠からオーバーを繰り返している。ん?中田不調か? 6万の観衆は皆、解説者やレポーターになって、日本のエースに眼を凝らす。
19時30分、スタメンの発表。稲本、小野、中田・・・と、ひときわ大きな歓声。ウエーブは留まるところを知らず幾度となく繰り返され、そのエネルギーは、凝集されて、選手に注がれていく。
20時30分、ついにキックオフ。注目されたモストヴォイはベンチスタート。思わぬとりこぼしもなくいい調子でスタートした日本だが、なかなか点は入らない。チャンスになると歓声、ピンチになると悲鳴。中盤でのしのぎ合いが続くと、にっぽん!ちゃちゃちゃ。
サッカー観戦には、ビール・お弁当の法則はあてはまらない。とにかくスピーディ。ところがいかんせん、気合をこめて”よおし、シュート!””行けーぇ”と叫んでいる一方で、 “ところで今シュートしたの誰?” なんて尋ねるところが情けない。だって、遠くは見えないんだもの。テレビじゃないから、アップはないのよ。スローモションのリプレイだってないし、解説だってないんだよ。
TEXT/椎名 まこ
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