エジプト人じゃない?トルコ人だよ。そうだっけ? 7番目の地球には王様は何人? ううむ・・・
雰囲気が盛り上がってきたところで、プラネタリウムへ。思い思いに、寝っ転がって、天井を見上げる。夕暮れの天井が、だんだんと暗くなり、今日の星空が見えてくる。白鳥座のデネブと、琴座のベガ、わし座のアルタイル、夏の大三角。火星が接近してきて、アンタレスと並んで見えます。解説の声は、どこまでも柔らかい。気持ちよい冷房と、部屋の暗さ、程よい床の硬さが睡魔を誘う。遠くで、いびき。そして、クスクス、押し殺す笑い。
プラネタリウムが終ると、今度は、本物の星の観察。口径83cmのご自慢の天体望遠鏡で、星をとらえて見せてくれた。いくつか星を見せてもらったところで、戸外へ飛び出す。
昼の暑さが嘘のように、爽やかな風が吹いている。視界の拡がる暗い広場を見つけて寝転がる。牽牛と織姫を分かつ天の川。いて座の散光星雲、さそり座、かんむり座、いるか座。今日だけは、誰よりも詳しい。
帰りに、やっぱりちょっと、覗いてみた。自動販売機と外灯。午後10時、いたのは、カブト虫ではなくて、網と虫かごを持った家族連れ、少年、おじさん・・・。そうか、みんな考えることは、同じだね。そこで、小さな情報交換会。捕れましたか?わあ、立派ですね。どこにいましたか?子どもに頼まれて仕方なく・・・と言いつつも、嬉しそうな笑顔で、今夜の獲物(?)を見せてくれるおじさん。気持ちは、きらきらと輝く眼の少年に戻っている。そうだよ、時には忘れていた昔に戻って、夢を追いかけようよ。
見慣れぬ黒い虫が飛んできた。ゲンゴロウだった。何の虫でしょう?やっぱり少年に戻っている我が夫どの、澄まして、”私どもは、ごんぞむし と、呼んでいます。”(おいおい、初めて聞いたよ、そんな名前。でも、雰囲気、ぴったりだね)。 ”へえー。” (どうぞ、図鑑で、ゲンゴロウをしみじみと眺めてみてください。ごんぞむし・・・そんな気がしてきますから。)
大きな少年たちは、網と虫かごと、懐中電灯を持って、それぞれの冒険に再び旅立って行く。空で、流れ星がひとつ、流れて消えた。
捕まえたカブト虫は、家のクヌギの木の下に、放してあげた。ここで卵を産んで、来年さらに立派なカブト虫が、我が家の外灯にも飛来することを祈りつつ。
TEXT/椎名 まこ
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