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南阿蘇で星をみる(ルナ天文台)<1>

   夏は、星空を見るためにある。冬の凛とした夜空とは比較するすべをもたないが、冬の星空観察を、フォーマルなディナーに例えるなら、夏の夜空は、カジュアルなブランチとでも、表現してみましょうか。凍てつくような寒さの中で、”星をみるぞ!”の強い決心を持って見るのとは違い、夏は、闇のうごめきを感じ、さわやかな夜風のざわめきを聞きながら、気軽に楽しむことができる。時々は、遠くの花火を、”世にも珍しい赤い流れ星!!”と感動したりすることもある・・・。

    梅雨も明け、夏のじりじりした陽射しを背中に感じるある日、天の川を見に、南阿蘇へ向かった。夏休み、連休という、移動には悪条件をクリアするため、出発は午後10時。
    九州自動車道を熊本インターまで南下、57号線を長陽村まで走り、さらに325号線を高森まで。高森峠を越え、高森トンネルをぬけると、時計は深夜0時をまわっていた。漆黒の闇だった。あたりに車も人影もない。車は目標を定め、ゆっくりと山道の脇にとまる。子どもはすでに、すやすやと寝息を立てている。さあ、大人の時間・・・。

    用意は出来ていた。大人は、目を異様に輝かせ、車からすべり出る。手には、700m先まで見通せるという宣伝、に惹かれて買ってしまった8000円もする超高級懐中電灯。”いたー!!” すかさずもう一人の大人も駆け寄り、すばやく押さえ込む。よーし、ゲットー!!

    ゲットしたのは、黒褐色、頭上に先の割れた長い角状突起をもつ、コガネムシ科の大型甲虫、つまり、かぶと虫であった。 何せ、今や子どもは、カブト虫はペットショップで買うものと信じている。そのような誤った認識は、是正されなければならぬ。そんな訳で、こんな夜中に山の中に来てしまった訳だけれど、肝心の息子は寝ちゃったね。
    でもいいや、意外と簡単に見つけれるんだね。カブト虫やクワガタは、樹液を吸うんだから、外灯の灯りに集まる必要もないと思うのだけれど、何故だか、集まってくる。しばらくその大きな羽音を聞いて姿を追っていると、突然落下する。しかも、アップサイド・ダウン。つまり、さかさまに。
    そこをすかさず取り押さえる。外灯の下、自動販売機の周り(どんな山の中にも、自動販売機ってあるもんですね)で、6匹捕まえた。

TEXT/椎名 まこ
E-mail : nagi@nagi-web.com