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星野道夫の世界<1>

~風景のうしろをみつめた写真家~

◆星野道夫の生涯

1952年/千葉県市川市にうまれる。

1968年/夏(16歳)、2ヶ月をかけて、ひとりでアメリカをヒッチハイクする。
・・・世界の広さを知ったことは、自分を解放し、気持ちをホッとさせた。 ぼくが暮らしているここだけが世界ではない。さまざまな人びとが、それぞれの価値観をもち、 遠い異国で自分と同じ一生を生きている。 つまり、その旅は、自分が育ち、今生きている世界を相対化してみる目を初めて与えてくれたのだ。

1971年/(19歳)の夏、アラスカ、シシュマレフ村で、エスキモーの家族と3ヶ月暮らす。
・・・18歳のミチオが、あるとき見かけたアラスカの写真集。夕陽がベーリング海に沈もうとする写真に惹かれた彼は、 どうしてこんな荒涼とした場所に人間の生活があるのか、写真の背景に心を奪われ、手紙を書いた。

・・・この旅は、僕にひとつのことを教えてくれた。 それは、こんな地の果てと思っていた場所にも人の生活があるというあたり前のことだった。 人の暮らし、生きる様の多様性にひかれて行った。どんな民族であれ、どれだけ異なる環境で暮らそうと、 人間はある共通する一点で何も変わらない。それは、誰もがたった一度のかけがえのない一生を生きるということだ。 世界はそのような無数の点でなりたっているということだ。

1976年/慶応義塾大学経済学部卒業後、動物写真家、田中光常氏の助手を2年間務める。
・・・21歳の時、親友Tが、遭難事故で亡くなった。
今考えると、その出来事は自分の青春に、ひとつのピリオドを打ったように思う。 僕はTの死からひたすらたしかな結論を捜していた。それがつかめないと前へ進めなかった。 一年がたち、ある時ふっとその答が見つかった。何でもないことだった。それは、「好きなことをやっていこう」 という強い思いだった。Tの死は、めぐりめぐって、今生きているという実感をぼくに与えてくれた。

1978年/アラスカに移住。アラスカ大学野生動物管理学部で、4年間学ぶ。 以来アラスカの自然と動物、そこに生きる人びとの暮らしを撮り続ける。
『ナショナルジオグラフィック』『オーデュボン』などの雑誌に写真を発表。

1986年/第3回アニマ賞、1890年第15回木村伊兵衛賞受賞。

1996年/8月8日、ロシア、カムチャッカ半島、クリル湖畔でTV取材中、ヒグマに襲われて急逝。

TEXT/堀川 貴子
E-mail : nagi@nagi-web.com