水の起源は聖なるハレアカラ山からである、という着想を具現化した滝から、そのプールははじまる。プールというより、川といったほうがふさわしい感じ。まずは、世界初、唯一の水中エレベーター(water elevator)?で、スタート地点へお上りください。待っている人もいない、ラッキー。天井の空いた円柱のような部屋のゴムタイヤの椅子に座って待っていると、頭の上で声。”Are you ready(用意はいいかい)?”そして、いきなり上からものすごい水が降って来た。その水圧によって、ゴムタイヤは、少しずつ上へ押し上げられていく。息を止めて?ひたすら水が落ちていくのを待つ。5メートルほども上がったろうか。全身ずぶぬれ、滝地獄。どうせ水着なんだからかまわないけど。どおりで待っている人がいなかった訳だね。
さて、いよいよ、ワイレア峡谷リバープールの川下りに出発。いきなり急流。細くなったり、広くなったり、瀬になったり、深くなったり、まさしく、川そのもの。スリル満点、かと思えば、子ども用の浅瀬のプール。洞窟には、おしゃれなプールサイドバーもある。ターザンのプールを通過。縄をつかんで飛び込んで遊ぶ。さらに下って、洞穴の中には、冷えた身体を温めるサウナとジャグジー。また、広いプールに出たと思えば、こんどはバレーボールネットのある運動用プール。こうして、4つのジャングルプール、洞窟プール、ターザンプール、運動プール、子供用と赤ちゃん用のプール、3つのジャグジー、サウナ、バー、7種の各種スライダーの峡谷の旅は終わり、そして本当に不思議なことだけれど、最初の水中エレベーターの出発地点にもどってきた。アンデルセンなら、これだけで、冒険物語を書いちゃうよね。これなら、プールで迷子になっても不思議はないね。
プールサイドには、小鳥たちが、食べ物のおこぼれをもらおうと、集まってくる。なんの警戒心もなく、手のひらのポテトチップスを食べている(ちょっと塩分とりすぎだよ)。南の島のリゾート特有の、ゆったりとした時間が流れていく。
夕暮れの浜に出てみた。絵葉書でよくみかける、まさしく海辺の夕陽と同じ風景がここにある。視野の端には、やしの木。前を遮るものは何もなく、穏やかで静かな海に太陽は帰っていく。一日遊んで火照った身体に、夕暮れの風がやさしい。潮の匂いと波の音、そして薄暮にうごめき始めた巨大カタツムリと巨大カエル?は、天からの贈り物(常備カニばさみで、ちょっかいを出してみたが動じない。さては日本までは持ち帰るられぬとよまれていたか。)あちこちで、部屋のバルコニーに灯りが点き始めた。
それは息を呑むほど美しい光景だった。ロビーの天井に描かれたモザイクは、紺碧の空に白く輝く上弦の月。しかも、時間とともに、月は移ろうではないか。天井のないロビーの、マーメイドの像に、ほのかな月の光が降って来る。その日のカクテルは、ムーンライト。そこまで迫ったハレアカラ山のシルエットがくっきり見えた。
時間よ、止まれ・・・歌を思い出す。だけど、時間は決して止まらないことを私は知っている。 皆に一様に与えられ、誰にも同じように刻むこの時を、さて、今からどんな風に過ごしてゆこうか・・・。(やっぱり浜辺でカニとりかな。)
TEXT/椎名 まこ
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