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ハウステンボスで夢をみる<1>

    今なぜハウステンボスなの?と聞かれ、うっと詰まった。模範解答は、クリスマスのイルミネーションがきれいだから・・・かな。もちろんそれもある。私はただ、どこどこはテロが危ない、とか、白い粉をみれば炭疽菌かも、平和なんてどこにもありはしない・・・なんて思ってしまうこの寒々とした世の中で、ちょっとだけ夢を見て、ひびの入った心を癒し、明日へ繋がる活力を取り戻したい、そう思っただけ。
    そんな訳で、なぜ心を癒すのに”カニカゴ”がいるのか不明だけれど、車のトランクにそっと忍ばせ(でかいから、これだけで荷物は満杯だぜ)、いつもよりちょっとだけおしゃれをして、ハウステンボスをめざす。

    ハウステンボスは、地下には共同溝を張り巡らし、運河の護岸は自然石で積み上げ、生ゴミはコンポスト処理で堆肥化するなど、また、海水を真水に変える海水淡水化装置や、排水を浄化する下水処理システムも完備し、地球にやさしい街づくりを世界に提案しています・・・そんなパンフを眺めつつ到着。ふーん。単なるオランダを真似ただけのテーマパークじゃないんですね。そこには、ピーンと筋の通った並々ならぬ意気込みが感じられる。

   パークに入場する前に、近くの川へカニカゴしかけ。汚い川だとへどろに絡まった草だとか、お弁当のからなんかが入っていることがある。環境を良くするも悪くするも自分達なんだ、と自覚することが自分達の地球を守る第一歩。誰に問われた訳でもないけれど、そんな論議をしながら、今日は環境改善研究委員会?の委員になって、川にカニカゴを投げ込む。

    入国ゲートをくぐると、飛び込んでくる町の名前もきっぱり横文字、キンデルダイク、ニュースタッド、ユトレヒト・・・。スパーケンブルグ行きのバスが出ます、なんていきなり言われても。初めてここへ来た時、風車がくるくる回っているのに感動してしまった。 ずっと前に本当のオランダに行った時には、回っている風車なんて一台もなかったのに。ガイドさんの話だと、もう現役引退しました、なんて言ってたっけ。
    ゆるゆると景色を楽しみながら、街の中心部へ。テーマパークへ行って、しかもフリーパスポートなんてのを持ってたりすると、使わなくっちゃもったいない、とばかり、いつもあせってアミューズメントまわりをして、疲れきってしまう。今回は癒しの旅・・・と心を決めて、ゆっくりと、その雰囲気だけ味わっていく。張りぼてでない本物の煉瓦。街を流れる運河。40万本ともいわれるさまざまな樹木。たくさんの花。運河を見ながらカフェでお茶を飲むひと時の豊かな時間は、なにものにも換えがたい。

TEXT/椎名 まこ
E-mail : nagi@nagi-web.com