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海の中道ホテルで自転車にのる<3>

   

 何年か前、野生のイルカを見に行ったことがある。冷たい風が吹きつける季節だった。小さな船で、30分くらい沖へ出る。 イルカの群れをいかにすばやく見つけれるか、どこまで限りなく近づけるかは、船頭さんの腕による。たくさんの船がイルカの回りに集まってくる。あっちの船の方がいいポジション、とか、もっと近づいて・・・などと、思い思いの勝手な言葉を発する人間たちとは無関係に、イルカの群れはピョンピョンと飛びながら船の横を通り過ぎ、或いは、横切っていく。
    あのイルカ達と、水槽の中で、技を披露してくれるイルカ達。生まれたところで環境が違ってくるのは、私たちも同じ。どちらも、一所懸命に生きている。私たちも、一生懸命に生きている。
    正統派イルカとアシカのショーを楽しんで、ホテルに戻った。

    海の中道ホテルは、客室総数99室と決して大きくはないけれど、翼を広げた白い鳥をイメージして建てられたその建物は、明るくてのびやかな拡がりがある。気取ったところがなくて、埃まみれでくたくたになって帰ってきても、温かく迎えてくれる雰囲気がある。部屋のカテゴリーは、スタンダードツイン、バルコニーツイン(いづれも33㎡)、ラージツイン(45㎡)、スイート(66㎡)とあるが、ここは絶対、出来るだけ上層階のラージツインをお勧めしたい。ほどよい広さと落ち着いたインテリアは、居心地のいい空間を提供してくれるし、部屋からの眺めは、疲れを吹き飛ばしてくれる。まじりっけのない緑と、まじりっけのない青。ここから見下ろす海は、何故かとっても穏やかで優しい。そして、わが庭のように近しい。

    海の近くにくると、いつも、海に直接沈む夕陽が見たいと思う。雲があったり、山や島に遮られて、直接に太陽が海を紅く染めながら消えていくシーンには、なかなかお目にかかれない。今日こそは・・・。車で、夕暮れの島をぐるりと回る。志賀島で一番夕陽がよく見えるポイントを誇る展望台(と、自分たちで名づけた)から、未だぎらぎらと衰えを見せないながらも、残念そうに消え行く太陽を眺める。その赤い物体は、神々しいまでの光を放ちながら、海の上で、雲にのまれて消えていった。
    あたりは、静寂に包まれる。静かな波の音。さて・・・

   薄暮の海辺を歩く。手にはおなじみ、高級懐中電灯と、魚捕り網。もぞもぞとカニがうごめく。岩の陰で、眠りにつく小さな魚達。揺れる海藻とアメフラシ。昼間見えない別の世界が拡がっている。さすがの高級懐中電灯もバッテリー切れには、勝てない。灯りはだんだんと弱く細くなり、ついには、闇に包まれた。
    何も見えない。単調に繰り返される波の音と、海の向こうに突き出した半島に見える民家の灯り。それぞれの団欒と夕餉。さあ、ホテルに戻って、ビニールボールサッカーでもしようか・・・(ええっ)。

TEXT/椎名 まこ
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