ストレスは環境であれ心境であれ、変化のあるところには、必ず発生します。意外に感じるかもしれませんが、ストレスには、心身を疲れさせる悪玉(デイストレス)ばかりでなく、人の働きを活性化させる善玉(ユウストレス)があるのです。
デイストレスの中には、自分ではなかなか自覚できないものもあり、従って、『私にはストレスはない』と思っている人には、2つの可能性があります。どんな変化も、ユウストレスとして受け止めるよほどの達人か、今はまだ、気づいていないだけなのか。後者の場合は、ちょっと厄介です。なぜなら気がついた時には、すでに身体がかなりのダメージを受けていることが多いからです。
こうしたダメージの中でも、代表的なものが、頭痛や肩こり、動悸、めまい、耳鳴りなどの自律神経の失調による症状です。(最近は、ストレスからくるこのような症状に悩んでいる20代、30代の女性が急激に増えています。)
こう考えると、ストレスを感じることは決して悪いことではないことに気づくでしょう。今の自分の生活や心の在り方を見直すよいきっかけを、ストレスが提供してくれている訳ですから。ただ、何でもあまりにストレスと思いすぎるのも考えものです。そういう人をカウンセリングすると、変化に対する受け止め方に、とても、偏りがあることがわかります。その場合は、少し受け止め方をかえる方法をアドバイスするだけで、症状が楽になる場合があります(認知療法)。きっと、いくつかの余分なデイストレスが、ユウストレスに変わるからでしょう。
ストレスケアのキーワードは『日常』です。変化のある所、必ずストレスが発生します。ストレスは日常の中にある、だから、そのケアも、日常の中で行えばよい訳です。食事は、ストレスを軽減し、耐性を高めるカルシウム、ビタミンA1、B1、Cを多く含む、乳製品や緑黄色野菜を意識して摂るようにしましょう。入浴も、一日のリラックスタイムとして、活用してください。38~40℃の浴槽に、5~10分浸かるのが効果的です。そして睡眠。量より質を重視します。純粋な身体の疲労より神経の疲れが勝っていると、良質な睡眠はとれにくいもの。入浴前にストレッチなどの軽い運動をすることをお勧めします。
一方、自ら積極的に求める変化は、ユウストレスを生み出します。ストレスに悩んでいる人の多くは、受身的な変化を避けようとするあまり、自ら求める変化もマイナスに働くと思いがちです。ストレスの多い『日常』に嫌気がさしているのに、そんな『日常』が永遠に続く状況を自ら演出しているようなもので、これこそが最大のストレスになっているのです。
『日常』に『非日常』を採り入れる意味がここにあります。ぜひ意図的に、自分なりの趣味を生かした非日常的イベントを計画してみてください。規模に応じて、週、月、年に一度と。こうして、ストレスに満ちた日常を時間的に区切ってしまうことは、ストレスケアの大事なポイントです。
以上のような工夫をしても(あるいはできずに)心身に不調が続くときは、早めに専門医に相談した方がいいでしょう。何ごとも、転ばぬ先の杖です。
院長/堀川 喜朗