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インタビュー/特集


≫インタビュー(1)
   CUBIX[建築家]野崎陽一さん

プロフィール/野崎陽一

    事務所のドアを開けると、目の前にやたらでっかいバイオリン。じゃなくって、チェロ?コントラバス?なんだっけ? 出迎えてくれた先生は、にこにこと、“ウッドベース”だと教えてくれた。“学生時代にちょっとやっていたものだから…。” さすが設計事務所の先生だ。ウッドベースがかもし出す雰囲気は、訪問者の気持ちをほぐす。
    部屋の中に部屋がある。マンハッタンを飛び回るビジネスマンたちのオフィス。ガラスで仕切られた奥はボスの部屋。 ブラインドの向こうで影が動く。さながらそんな所かな。
    初めてお会いしたのは14年前だった。家を建てたいんだけど…紹介されて始めての打ち合わせ、彼は、住まいについて、 とうとうと持論を述べた。彼の眼鏡の奥に光る鋭いひとみは、技術に裏付けられた高い理念の実践者としての光を放っていた。
    何畳の部屋がほしいの?そんなことは、決して聞かない。取りとめもなく続くように思える会話の中で、彼は、察知する。施主 さえも気づかずにいる精神の内面を。なにを求めて、ここに家を作るのか?なにがあれば、満たされるのか?なにが心地よい状況 を生みだしてくれるのか?
    施主の内面を“家”という箱に包み込む孤独な作業。彼は静かに苦悶している。そして、苦悶の経過は告げずに、答えだけを準備 する。彼のスタイル。計算され尽くした轍(わだち)のあとが、彼のデザインの中に刻まれていく。
    設計家の仕事は、素人が大別するに2つある。一つは、施主の要望にあわせて間取りも含めたデザインを考えること。もう一つは、 そのデザインを図面に落とし、ゼネコンが作れるものにすること。具体的に作れる、という確信がなければ、ただの空論でしかあり得ない。 高い技術と優れた感性の融合。小さな納得をあえて捨て、彼はとことん追及する。彼は、そこに存在するであろう人の目線を思い描き その一こま一こまにドラマを付加していく。
そして彼の苦悶が、大きな花となる。
    彼は静かに切り出す。“こうしましょうか?”
    彼とのお付き合いの中で、私は、自分を信じることを学んだ。自分を信じ、信念を持つことこそ、本当の力だと。
    今からも、彼はたくさんの素晴らしい建物を作ってくれるだろう。そして、彼の作品は、その輝きを決して失わないだろう。
    彼は無言でジャズを聴いている。BGMにはケニー・ジーがお気に入りだそうだ。静かな時の中で、彼の構想がふくらんでゆく…。
(ちなみに、セントラルクリニックの内装も、彼の設計です。)

インタビュー/堀川 貴子
E-mail : nagi@nagi-web.com


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