このカテゴリの目次へ
こころの病気について

≫『うつ』を知る

<2>症状について
    うつ病の症状は、精神症状と身体症状に分けられますが、いずれもその機能の渋滞を特徴とします。渋滞・・・まさしく頭の中の交通渋滞といったイメージで捉えてよいでしょう。前に進もうにも思うに任せぬ状態です。憂うつさ、不安、焦り。精神は疲れ果て、何をするにも億劫になり、動きたくない。何ごとにも悲観的になり、取り越し苦労ばかりして決断ができなくなる。劣等感が増し、自信を失い、人と会うのがとてもつらい。全てに興味が薄れ、感情も湧いてこない。程度の差こそあれ、これらは全て、うつ病の代表的な精神症状です。
    身体症状もまた、渋滞した、淀んだというイメージで捉え得るものばかりですが、一般的には、寝つきが悪い、夜半に何度も、あるいは、朝早く目が覚めるなどの睡眠障害、倦怠感、頭重感、頭痛、肩こり、胸部圧迫感、食欲低下、便秘等があげられます。これらの身体症状の多くは、精神症状と前後して現れますが、特に身体症状のみが前面に出て、殆んど精神症状が自覚されないケースがあります。これを仮面うつ病と呼び、例えば、「いかなる困難も気力で乗り切る」タイプの人に多く、自分の中に潜んでいる憂うつを認めえず、身体症状が出現してようやく受け入れるといった具合です(しかし、この場合もその前に「何となく仕事の能力が落ちた、うっかりミスが続いた」等の、普通とは違う体験をしていることが多いのですが)。
    またこれとは別に、急激な強い心的ダメージが原因で引き起こされたうつ病の中には、必発症状と思われがちな憂うつさが全く自覚されないケースがあります。この場合は、抑うつ感さえ味わえなくなった重症例の可能性もあり、注意を要します。
    さて、いずれにしても多くの人は、前述したような症状で日常生活もままならなくなってようやく(もっと早いに越したことはないのですが)神経科・精神科の外来を訪ねることになります。

← <1>へもどる / <3>へつづく →

院長/堀川 喜朗


このページのトップへ このカテゴリの目次へ