このカテゴリの目次へ
永岡龍市先生のエッセイ集

≫教育と経済

    この題目をいただいた時、どう表現しようか考えました。仕事柄、経済という言葉を具体的に知っています。
    経済は、感情のない数字と感情につき動かされる人間から成り立っています。それゆえに多くの人は、経済という言葉に美しい響きを感じていない筈です。
    教育は、心に豊かさと強さを与え、人生を美しく輝かせるための方法と思われます。しかし、多くの人々は教育を経済的に豊かになるための手段と考えているようです。
    今をときめくタイガーウッズがプロゴルファーの道を選ぶ時に母親から、「教養を身につけなさいそれは誰も奪うことの出来ないあなただけの財産だから」と言われたというのは有名なエピソードです。
    ソクラテスは、「自らが知らないことを知っている。」とプラトンに語りましたが、のちに教育論の柱になった言葉です。
    ルーズベルト大統領は、友人に自分が考える事の100のうち75まで正しければ望みうる最高の状況であると言ったそうです。偉大な人物達にしてこうなのです。
    自分の考えが55%正しいなら毎日株式投資で数百万を稼ぎ、ヨットを買い、美女を傍らに侍らせる事が出来るでしょう。しかし、教育で経済を統べる事は出来ないのです。
    教育とは恥を知り,美を知り、人を思いやる豊かさであります。それゆえに、経済とは対極にあるものかもしれません。
    メトロポリタンと東京の国立美術館を比べるとその違いが分かります。自らの生き方を知った人々の寄付で成り立っている美術館と、小役人が貧しい知性で運営する美術館の差は、そのまま建国僅か200年の国の教育との差であることを思い知らされます。
    先日,上野の美術館でニューヨーク近大美術館展を見てきました。入場料は、現地の3倍もしているのに展示されている中に3、4点しか見るべき作品しかありませんでした。
主催者が依頼したコーディネーターにいかに馬鹿にされていたか分かります。黄色の猿はこの程度と思われたのかも知れません。
    教育とは教養です。経済的に豊かになるための手段ではなく、どう豊かに生きるかの道しるべなのです。教育が不充分だと経済的に損をするのだという稀な例が、今回の美術展でした。何しろ3倍もする入場料を支払ったわけですから。 実感。

(凪2002-1月号)

公認会計士/永岡 龍市


■永岡龍市公認会計士事務所
■〒810-0001/福岡市中央区大手門1丁目2-23-202
■TEL : 092-731-5443
■FAX : 092-731-5447

 このコーナーへのご意見、ご感想、永岡 龍市さんへのお便りも、編集部あていただければ幸いです。

(編集長 堀川貴子 記)
E-mail : nagi@nagi-web.com

このページのトップへ このカテゴリの目次へ