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永岡龍市先生のエッセイ集

≫五感のシャングリア(桃源郷)

    私には、一日の中でもっとも幸福な時間があります。
それは、眠りにつくまでの30分間暗闇の中で自分の桃源郷を探す旅をするときです。
筆者は、いま痛風に悩まされています。しかも、本人はいたってグルメなので悲劇であります。当然、今夜は食を求めて旅に出ることにします。筆者はとても理論家でそのためへ理屈も多く家人から疎まれてはいますが、やはり理論的に今まで素晴らしく食してきた物を整理してみます。
    ロンドンのフィシュアンドチップス(さばのフライ)、パリの野鴨料理、モンサンミッシェルのスフレオムレツ、イタリアのさまざまなパスタ、スペインのパリパリに焼いたパエリア、北京ダック、香港のフカヒレ、ジーナンの海鼠スープ、数え上げたら切がありません。しかし、どれ一つを取っても最後の晩餐を飾るのにピッタリこない。最後に何を口にしたいかを想像すると、すべての料理が輝きを失ってしまいます。
    開高健のエッセイにやはり同じような記述があります。それによれば、素晴らしいのは水である、特にうまれた時にガーゼに沁みこませて口に含ませてくれた最初の水と、死ぬときに与えられる一口の水が最も美味であると。 そういえば、スタインベックもヘミングウェイも同じようなことを言っていました。悲しいかなどちらの水も思い出せないし、想像も出来ないものです。現時点では水よりも,極上のワインの方が絶対においしい。(痛風は水はいいけど、酒も禁じられています。)
    睡魔が襲ってくる25分過ぎに近づいてきました。ここから、桃源郷の入り口が見えてくるので、最も素晴らしい食事を想像します。この時、全身の五感を研ぎ澄まして下さい。
    そばには愛しく思う人が寝息を立てています。テラスは半分開いて静かに波の音が聞こえています。多分、アラブ首長国の海岸辺りのホテルでカウチに横になってワインそれも白と赤がふんだんにあって、軽めのサラダとパンがあれば最高です。
さて、この条件のなかで一番大切なのは何でしょうか。
それは、愛しい人がそばにいてくれることです。今まで贅沢な食事を、もちろん人のおごりでしてきましたが、どれも心に残っていません。筆者は、あと1分ほどで完全に眠ってしまうようです。
    この1分間では残念ながらそばで寝息を立てる人を発見できそうもないので、今夜はシャングリアに立ち寄らずに眠ります。皆さんはそばに愛しい人いますか?いてもいなくても五感を澄ましてみてください。
きっと、あなただけの桃源郷がそこに待っていますよ。
以上、タダで最高級ホテルに泊まリ食事を楽しむ方法でした。参考になりました?

(凪2001-7月号)

公認会計士/永岡 龍市


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