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永岡龍市先生のエッセイ集

≫日本人の行く場所

    ヨーロッパの人々に、あなたはアメリカ人ですかと聞くとみんな少し腹立たしい顔をします。彼らにとって、米国人は拝金主義の卑しい存在のようです。確かに、米国人は一方的にルールを作って押し付け、約束は屁理屈をつけて守らないという風に思われています。
そんな中で、最近よく耳にするISOというルールがあります。
    ISOとは、国際基準でありそのルールに従えば、国際的な標準の製品やサービスを提供できるというお墨付きであります。これがISO9000といわれる基準ですが、ISO14000は製品やサ−ビスではなく企業が環境にいかに適合して経営を行っているかを示す基準です。
米国の企業は、ISO9000は熱心に取得しましたがISO14000は全く取得していません。
理由は環境問題で訴訟されたときに、ISO14000の基準にしたがった資料の提出を裁判所に要求される可能性があるからです。
    ISO14000を真剣に取得しているのは、日本とヨーロッパの国々です。
長い歴史の中で、本当に大事なことは何かという問い掛ける心が培われて、拝金主義ではない価値観の共通性や普遍性を感じます。
    日本人の行く場所は、米国風ではなく欧州風ではないでしょうか。
    次の二つのエッセイから、私たちの行くところを探してみましょう。

1.父親は、長い単身赴任の合間を縫って家族のもとに出張のついでに立ち寄った。一人娘は4歳のとき以来まともに合っていなかったが、もう1年生になる。父は娘にお祝いを買ってやると申し出た。多少高いものでも良いよというと、娘は恥ずかしそうにそして言いにくそうに言った。お父さんと手をつないで商店街や土手の上をお散歩したい。
    父の目に映った娘は、たちまち滲んで見えなくなった。父親は,すぐさま支店長に電話して明日の出社は午後からにしてけれるように頼んだ。
<川上健一>    
2.書斎で書物をしていた。そこに8歳の息子が入ってきた。     なにか言いたそうにしていたが、大事な仕事での途中で邪魔されたので私は、何が言いたいのかと詰問していた。
    子どもは、黙って私のもとにきて小さな手で首に手を回し、頬におやすみのキスをして部屋を出ていった。
    私は、おまえが8歳であることをすっかり忘れていた。
    朝はテーブルにミルクを溢して叱り、昼は部屋を散らかしたと叱り、夜は歯磨きがいいかげんだと嫌味を言った。でも、おまえはまだ8歳なのだ。
    おまえの手のぬくもりと悲しげなキスで打ちのめされている父を、見捨てないでほしいと心から祈っている。
<カーネギー>    
    大事なこと、正しいこと、日本人はもっと自分自身の規範を心の中に持たなければいけません。人並みにとか他所様に笑われないようにとかではなく、何が正しくて、何が大切か、何が美しいのか一人一人の基準があり、国際基準は押し付けられないものなのです。
ISO自分を探せそうですか?

(凪2001-3月号)

公認会計士/永岡 龍市


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