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旅へのいざない〜旅行記〜

≫済州島で、アイデンティティについて考える<3>

    しばらく悩んで、やっぱりフロントへ行った。バルコニーがないんです・・・・。フロントのヤンさんは、きちんと話を聞いてくれたが、部屋の構造上、ジュニアスイートにはバルコニーはないと言う。お願い、普通の部屋でもなんでもいいから、バルコニーのついた部屋に替えて・・・。リゾートホテルでバルコニーがない部屋なんて、クリープをいれないコーヒーだよ。これじゃあ、インパクトがないね。そうだ、リゾートホテルでバルコニーがない部屋なんて、パクカンジョのいない韓国サッカー界だよ。ハンさんは、『満室で・・・』と頭を悩ませながらも、また連絡してくれると言った。
    韓国では、やっぱり、骨付きカルビを食べねばならぬ。豚肉も有名らしいが、ここは韓国初心者として、謙虚な気持ちを忘れてはならぬ。ホテルで、"おいしくて日本語で注文できる焼肉屋さん"、を教えてもらって、タクシーに乗った。運転手さんにちょっと聞いてみた。いよいよワールドカップですね。サッカー好きですか? 無口な運転手さんは、ぼそっ、ぼそっと、呪文のようにつぶやく。ホンミョンボ。パクカンジョ。コジョンス。これじゃあ好きなのか嫌いなのかも分かんないよ。
おまけのキムチ     オレンジなんとかという焼肉屋さんに着いた。注文した以外の野菜やキムチが、山と運ばれる。(これが韓国流おもてなしらしい。)店員さんが肉をもってやって来た。『これはタンです』、名前を告げると、全部一気に鉄板にのせて焼いていく。サンチェの葉に包み、コチジャンをつけていただく。うんうん、本場の焼肉はやっぱり違うね。焼きすぎないように急いで食べる。鉄板の上が空になったのを見るやいなや、焼肉ばさみのおねえさん、『次はロースいきまーす。』ジャーーー(肉を全部鉄板にのせる音)。焼きすぎないように、かなりあせって食べる。『では次は骨付きカルビでーす。』有無を言わさぬすばやさで、一気に肉を鉄板へ。ジャーーー。えっ、また全部のせちゃうの・・・。そうとうあせって食べる。
本場骨付きカルビ     お願い待って、ゆっくり焼いてね。『はいはい、分かりました、ではヒレですね。』 ジャーーー。『焼けすぎないうちに早く食べてねー。』にこにこしながら、焼肉ばさみを握りしめたお姉さんは去って行った。私たちはもうくたくた。自分で食べたい分だけ焼いていただく日本のスタイルが懐かしい。韓国の焼肉ってみんなこうして食べるのかな? それでもやっと肉から解放されて、ゆっくりクッパを食べていると、『そろそろお車呼びましょうか?』 オー マイ ゴッド。
    明朝早くまだぐっすり寝込んでいるとき、電話がなった。『バルコニーがなくてお困りですか?』
別に困りはしないけれど・・・いちおう『はい』。フロントのハンさんだった。ヤンさんから引継ぎをしたハンさんは、バルコニーのあるもっと素晴らしいお部屋を用意しました、と言う。寝ぼけながら聞いていると、スイートの部屋を追加料金なしで使っていいと言ってくれている。寝ぼけもいっぺんに吹き飛んで、相手の気持ちが変わらないうちにと、すばやく荷物をまとめる。
パシフィックスイートルーム
    案内してくれたのは、ジュニアスイートの2倍の広さ、料金は3倍のほんとのスイートルームだった。もちろん、立派なバルコニー付き。8畳ほどもありそうな広いバスルームには、大きなジャグジーもあった。手際よくエクストラベットも入れてくれて、『何かお困りのことがあったら、何でも言って下さい。』

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TEXT/椎名 まこ
E-mail : nagi@nagi-web.com

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