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介護保険物語2000年から2004年(5)


[第5回 介護保険サービスの内容 その2]

   介護保険2000年から2004年物語も、今回で最終回を迎えます。介護保険の仕組みの大枠をご理解いただけたでしょうか。とはいうものの、来年2005年は、施行5年目の節目を迎え、大幅な保険内容の変更がされようとしています。2006年はその新しい内容の施行年となり具体的に展開されます。また大きな流れとして「介護サービスの普遍化」という命題に沿って、日本の介護サービスが障害者サービスを含めて統合化されようとしているようです。こういった変革が、真にそれを利用する人たちの役に立ち、利用しやすくそして何よりも、その人の自己決定における自立支援につながるような制度にしなければならないと思います。皆さん注意深く福祉の法律の動向を見守っていてくださいね。厚生労働省のホームページを開いてみるのもいいかもしれませんよ。社会福祉のことに限らず、児童福祉や年金等、私たちの日々の生活に関する国の考えや方針が見えてきます。

   さて前置きはこれくらいにして、最終回は、介護保険における重要な枠組みの一つである「施設サービス」についてお話したいと思います。
1.介護老人福祉施設
   これは老人福祉法でいっていた「特別養護老人ホーム」のことです。略して「特養(とくよう)」といっています。何らかの障害で寝たきりになった方や、痴呆が重度化して、在宅での介護が困難になった方を、施設に入所してもらい、介護を中心に日常生活のお世話や機能訓練をする施設です。
   その基本には、「在宅での介護が大変である」といった、介護者の気持ちを考えてということだけではありません。その利用者が、在宅で生活したほうがいいのか、施設で生活したほうがいいのか、どちらが本人にとって快適な生活が送れるのかという自己決定権が介護保険では保障されています。ここが今までの福祉による措置制度と大きく違うところです。
   またその自己決定権には施設を選べるという意味も含まれています。好きな施設、自分に合いそうな施設を選別できるということです。そして、気にいらなければ、別の施設に移る(選ぶ)ことが可能だということでもあります。

2.介護老人保健施設
   これは、老人保健法でいう「老人保健施設」のことです。略して「老健(ろうけん)」といっています。ここでは、機能回復訓練などのリハビリテーションをおこない、日常生活動作(ADL)の維持・向上を中心とした生活介護をおこないます。
   脳梗塞や脳出血などの後遺症で、身体的に不自由となった方や、病状が比較的安定していて、入院治療の必要は無いものの、看護や介護、そしてリハビリテーションを必要とする方を、その対象としています。また対応できる医療があるということが、この介護老人保健施設の特徴です。
   介護老人保健施設においても介護老人保健施設と同様に、自己決定権が与えられています。行きたい施設を選べるということです。

3.介護療養型医療施設
   脳梗塞や脳出血等の脳血管障害を起こし、急性期対応の医療施設に入院、その後、病状は安定しているとはいえ、医師による医学的配慮・予測・評価は必要であるといったような方の対応をしてくれるのが、介護療養型医療施設です。簡単にいえば、在宅では介護が困難であり、治療も必要であるし、リハビリテーションも必要である方に対応してくれる施設だということです。介護療養型医療施設は、寝たきりにさせないためのケアを重視した医療がおこなわれます。
   介護療養型医療施設は、療養型病床群ともいわれ、病院に併設されたものが多いようです。慢性病などで、長期の療養を必要とする患者であり尚且つ要介護者のために、医療機能より介護機能に重点が置かれた医療施設だといえます。また介護療養型医療施設には介護保険を使って療養してもらうものとは別に、老人医療で対応するものとがあります。そこには障害者医療も含まれます。この辺の説明は複雑になりますので、施設を利用する場合は、その病院のソーシャルワーカー等の担当職員に確認してください。
   この他、痴呆が進み問題行動を起こして慢性期に至るようになったお年寄りや痴呆が進み他の施設での介護が困難になった要介護状態のお年寄りを受け入れる施設として、「老人性痴呆疾患療養病棟」を持つ病院もあります。
   在宅でサービスを受けながら生活するのか、在宅でサービスを受けながら施設のサービスも利用し生活するのか、施設を中心に生活するのかは、本人や家族の判断(自己決定)が必要です。それは、その人の日常生活の能力や、その人を取り巻く介護力にも影響されます。迷惑をかけたくないかけられたくないといったような、精神的な判断も必要です。こういった判断をするときに様々な情報やアドバイスをくれるのがケアマネージャーといわれる介護支援専門員です。介護問題のプロです。そして介護保険ではその相談料は無料となっていますので、親身になって相談に乗ってくれる、自分と相性のいい介護支援専門員を見つけてください。今日本には、この資格を持った方が20万人前後います。優秀な介護支援専門員に出会うことが、介護保険の第一歩でもあります。気軽に相談しましょう。
   最後になりましたが、介護保険で、様々な介護サービスが整備され、かかる費用の1割負担でそのサービスが利用でき、しかもその選択権が利用者へと優先されました。この1割の自己負担が高いと思うのか妥当だと思うのかは、そのサービスの質しだいだと思います。
   これからまだまだ変化するのがこの介護保険だと思います。その変化に取り残されないよう、また、自らの力で変化させるような介護保険利用者になってください。介護保険やさまざま福祉サービスを有効活用して、安心した老後、介護生活をおくりましょう。
(了)

※訂正…第4回で「家事援助」と記載しておりましたが、これは法改正前のサービス名で、現在は「生活援助」となっています。

Yamamoto福祉・介護研究会
代表 山本亮一
 この福祉のコーナーへのご意見、ご感想、山本亮一さんへのお便りも、編集部あていただければ幸いです。

(編集長 堀川貴子 記)
E-mail : nagi@nagi-web.com

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