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介護保険物語2000年から2004年(3)


[第3回 介護サービス計画(ケアプラン)について]

   今回は、介護保険のサービスを受けるためのサービス計画の作成についてお話したいと思います。
   介護保険の各種サービスを利用するためには、介護認定において、要支援もしくは要介護の状態になければ、その利用はできないことはお話したと思います。
   ではここで言う「状態」とはどういうことなのかをお話します。
   たとえば私たちが「カゼをひいた(状態)」と思い、病院にかかるということは、本人の自由な意思で受診が可能です。
   しかし介護保険においては、あらかじめ、この人は「こういう状態の人」ですという認定をもらっておく必要があるということを指しているのです。この認定の段階では、本人の自由な意思は反映されません。そしてその治療方法(介護保険サービスの利用)は、原則として認定が行われた後で調整し利用していくという段階を踏みます。
   しかしこの段階で大切な事は、その治療方法(介護保険サービス利用)を自分の自由な意思で決めたり、選択することができるということです。それが「介護サービス計画(ケアプラン)」なのです。
   病院での治療は、主治医が治療方針を指し示し、それに患者が同意するという形で進行していきますが、介護保険サービスは本人や家族の同意や意思の決定を最優先し、それがないと進行しないようになっています。
   では次に、その「介護サービス計画(ケアプラン)」の内容を説明します。
   それは、対象者本人だけではなく、その方を介護している人がいればその人を含めたところで、日常生活上の問題や困難なこと、援助を必要としていること(ニード)などを話し合い、それを整理し、それらを解決するにはどうしたらいいのかを考え(目標)、それに向かっての方向性(目的)や、解決のための協力者(協力機関)への依頼や必要とされるサービスの役割分担、そしてそれにかかる費用等を算出した様式「介護サービス計画)としてまとめ上げていきます。
   その様式の主だった内容を、少し具体的に述べます。

@総合的な援助方針を示すもの
   利用者や家族の介護への意向・援助の方向性を示す内容のものです。
A解決しなければならない問題を示すもの
   これは、生活で困っていることなどを細かく具体的に示すものです。
B週間のサービスの予定表
   これは、時間帯に入るサービスを表示した計画表です。
Cサービス実施にかかる費用を示すもの
   これは、月単位にかかる費用を明示したものです。

等のものがあります。
   次に、介護保険では、「契約」という形をとります。それに付随して、「契約書」を交わすことにもなります。介護保険におけるサービスは、サービスを利用する人や家族と、その必要とされるサービスを提供する指定業者との契約関係が成立して、その後、実際にはサービス提供が展開されるということになります。だからこそ、その関係を明確にするために、「介護サービス計画書(ケアプラン)」が必要となってくるのです。
   そうはいっても、介護保険サービスの事を十分に把握して、その実施が適切に行える人は、あまりいないと思います。勿論、自分で作成してもかまわないのですが、しかしこれも難しいことだと思います。
   そこで介護保険では、このサービス計画を専門に作成してくれる人を養成し、しかもそのためには、資格取得を必須としました。それが「介護支援専門員(ケアマネージャー)」と呼ばれる人たちです。この人たちに相談し、生活困難な状況を伝え、それらを調整してもらい、「介護サービス計画(ケアプラン)」としてまとめてもらうのが、最も適切な方策ではないかと思います。
   でもこの計画書は、あくまでも大枠を示したものにしか過ぎません。介護保険サービス提供者は、この計画書をもとに、各々の担当部門の計画を立てるようになっています。共通の認識(目標)を持って、各サービス提供者が各々の専門的援助をおこない、サービス利用者の生活困難状況を解決していくための計画(個別援助計画)を作成し、実施していくということになります。
   わかりやすく説明するならば、「介護サービス計画(ケアプラン)」は、絶対的な「憲法」であり、各サービス提供者が立てる「個別援助計画」は、臨機応変で修正可能な「法律」とでも言うことになるかと思います。
   もし憲法に触れるような法律が実行されたならば、そのお目付け役である裁判官(ケアマネージャー)に審議(サービス担当者会議の開催)を依頼します。
   介護保険サービスで、実際の介護サービスに問題があり、自分が要望していた内容と違ったものであったなら、介護サービス計画の最高責任者である介護支援専門員にその判断と修正を伝えて下さい。そこで変更が行われるはずです。もしそれを聞き入れず、親身に相談にのってくれない介護支援専門員であったならば、即刻契約解除して下さい。介護支援専門員はたくさんいます。自分に合った介護サービス計画を立てるのと同様に、介護支援専門員を選ぶこともできるのが介護保険です。
   これが介護保険でいう「利用者本位」「利用者優先」の考え方で、「権利」としての主体的介護サービスの利用ということの実現になるわけです。じょうずに介護保険を利用していきましょう。
   これで第3回目は終わりです。次回は介護保険サービスの具体的な種類と内容をお話ししたいと思います。


Yamamoto福祉・介護研究会
代表 山本亮一
 この福祉のコーナーへのご意見、ご感想、山本亮一さんへのお便りも、編集部あていただければ幸いです。

(編集長 堀川貴子 記)
E-mail : nagi@nagi-web.com

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