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永岡龍市先生のエッセイ集

≫不正直な社会と経済

    フラクタル理論というのをお聞きになったことがありますか。すべての物は、小さな相似形の連鎖によって成り立つという理論です。
    一時期この理論がもてはやされ、株の投資理論や経済政策にも採用される勢いでした。近頃、世の中を騒がせている大企業の不正直をこの理論に当てはめれば、そのまま私たちに跳ね返ってくることになります。
    個々の人々が正直であれば、全体として世界に不正直が蔓延するはずはないでしょう。しかし、経済学の世界ではミクロとマクロにパラドックス(逆説)が存在します。簡単にいえば、個の積み重ねが必ずしも 同質の全体を作らないということです。例をあげると貯蓄のパラドックスという理論があります。つまり各家庭が貯蓄を増やすと、分配が滞り社会全体の貯蓄は減少するという例です。 こう考えると、この小冊子凪を読んでらっしゃる良き老若男女がたとえ社会全体であったとしても決して世界は良くならないことになります。
    良い社会とは、機会均等であり、富の偏在がなく、多くの人が居心地の良さを感じる社会と仮定します。 10年前の中国はこれに近い状態でした。多くの人が天安門を契機に自由と夢を予感し、溌剌としていました。それが今は金が第一の、非常に緊張した社会になっています。やはりこの15年の米国も同様でした。
    日本は確かに大不況の真っ只中にいますが、本当にそんなに居心地が悪いでしょうか。
    不正直な企業は社会的制裁を受け、その会社の家族は大変でしょう。 不正直が悪時事として公表され、それで浄化され目覚める、個人はお金がないと嘆きつつも外に出ないで家族との時間に気がつく。今年も余すところ3ヶ月余り、苦しいとばかり考えず、バブルの華やかさをわすれ生活の調和を楽しんだらいかがでしょう。
    笑顔のパラドックスはありません。みんなが生活を楽しみ笑顔を思い出したら社会全体が明るくなることまちがいなし。GNPは2%くらい上がるでしょう。

    私も久しぶりに笑う練習をしてみます。
    少しぎこちないけども。

(2002-10月号)

公認会計士/永岡 龍市


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(編集長 堀川貴子 記)
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