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介護保険物語2000年から2004年(4)


[第4回 介護保険サービスの内容]

   介護保険施行前の老人福祉サービスは、「措置」制度でおこなわれていました。しかし4年前、様々な在宅福祉サービスや施設におけるサービスが、介護保険という新しい法律によって、大幅な制度上の変更を受け、全く新しい形でスタートしました。当時現場で働く職員スタッフは、その対応に追いまくられました。介護保険を利用する人たちもそうなのですが、そのサービスを提供する人たちも、毎日毎晩新しい法律とその制度の理解と展開の仕方に、心も身体もかなりのストレスを受けていたようです。
   そういった状況を踏まえながら、今回は介護保険サービスは一体どんなものがあるのか、具体的に御案内したいと思います。
   実際のサービス内容そのものは施行前と殆ど変わっていないので、福祉サービスを利用されている方々には、あまり迷惑をおかけせずに済んでいると思います。ただ今までと大きく違うことは、サービス利用においては利用者に決定権がゆだねられ、サービス調整もケアマネージャーという専門職ができ、その窓口が1本化されました。誰に相談し誰が調整するかが明確になり、利用者本位が実現されました。しかし、手続きが書類上煩雑になってしまったということがあります。何よりも変わってしまったことは、福祉サービスを受けられる人に対して、新たな制約が加わってしまったということです。
   例えば、皆さんご存知のように、例外もありますが、「要介護認定」を市町村から受けなければ介護保険サービス利用の対象者にはなれないという状況になってしまったのです。すなわち、市町村から許可をもらわない限り、この「保険」は使えないということなのです。
   でもマアご安心下さい。この「許可」をもらうことは、さほど難しいことではないということです。そのことは前回までにお話していますので、今回は省かせてもらいますので、皆さん復習しておいて下さい。
   勿論その許可をもらうまで、1ヶ月も時間がかかるというところはやはり「お役所仕事」であり、お役所の好きな「書類」を山ほど書かないといけないという現実的作業もあります。ただこの手間暇かかる仕事(作業)は、ケアマネージャーが無料(全額介護保険が負担する=10割給付)でやってくれますので、信頼できる介護支援専門員をなるべく早く見つけることが肝要かと思います。

   また話がそれてしまいました。今度は本当に本題に入ります。
@訪問介護
   これは今までは「ホームヘルプサービス」といわれていたものです。ヘルパーさんが決められた日時にやってきて、身の回りのことからお掃除や買い物まで、家事全般を手伝ってくれるサービスのことです。大きく分けると2つに分けられます。

a.家事援助…掃除・洗濯・片付け・買い物・繕いもの等、日常生活に欠かせない家事雑事を手際よくやってくれます。
b.身体介護…入浴の手伝い・清拭・オムツ交換等、身体の不自由な人たちに直接的に介助や介護をしてくれます。

   更にこの身体介護は、ある一定時間(30分〜2時間程度)じっくりと丁寧に介護をする場合と、短時間(30分程度)で、オムツ交換等だけをする場合のサービスに分けられます。これを「滞在型」や「巡回型」のヘルプサービスといいます。
   利用する人、その介護の内容によって介護保険ではどのようにでも組み立てることができるようになっています。そこには、勿論家族・介護者の意向も含まれることは、言うまでもないことです。
   その他の業務として訪問介護員(ヘルパー)さんは、福祉サービス全般の相談にものってくれます。身近な相談者としての役割も担っています。

A訪問入浴介護
   以前これは「入浴サービス」とか「入浴車」といわれていたものです。給湯機付きの自動車に浴槽を積み込み、在宅での入浴が困難な人たちを訪問して、その大きな浴槽を自宅に運び込み、看護師やヘルパーが寝たままでお風呂に入れてくれます。外出が困難な方で自宅での入浴が困難で、お風呂好きな方にはうってつけサービスです。

B訪問看護
   このサービスは、定期的に看護婦さんが自宅を訪問して、病虚弱な方や障害を持った人たちの健康管理を主治医と連携をもっておこなうものです。
   ここでは、かかりつけの医師と訪問看護師が常に連絡・連携を取り合うことで、往診できない医師に代わって看護師が医療的補助をおこないます。
   勿論このサービスは、単に肉体的健康管理だけではなく精神的健康管理も合わせて行ってくれます。血圧測定や床ずれ(褥瘡)の処置の医療的管理、医療相談や入浴介助、屋外散歩等がその良い例です。

C訪問リハビリテーション
   このサービスは、理学療法士や作業療法士が家庭を訪問し、在宅において心身機能の回復を図ります。日常生活の自立を助けるために、本人の生活の場で個別性を持ったリハビリテーションが行われます。

D通所介護(デイサービス)
   デイサービスセンターなどで、食事や入浴の提供、合わせて日常生活訓練なども受けられます。朝自宅まで職員が迎えに行き、看護師等が健康チェックを行い、その後、入浴や日常動作の訓練、食事、希望されれば入浴の提供もあります。もちろんここでは、レクリエーションなどを通して、利用者間の交流も活発に行われます。引きこもりなどの予防や、介護者の負担軽減も同時に可能となります。

E通所リハビリテーション(デイケア)
   デーサービスでの提供サービスと内容は、似ているようで似ていません。ここでは、より専門的なリハビリテーションが提供されます。それは、医師の指示に基づき理学療法士や作業療法士による機能訓練が行われるからです。在宅生活者でリハビリテーションが必要で、身体機能の維持や向上を強く望んでいる方が利用するサービスです。
   このように、ヘルパーさんや看護師さんが家に来てくれ、また通所サービスを利用することは、とても心強く在宅生活に安心をもたらすものだと思います。
   これが「QOLの向上」もしくは「生活の質の向上」ということです。ひいては生活圏の拡大ということにつながります。
   人間は社会生活を営み、その人間関係の中で成長するものです。外出し、他者とふれあうということは、必要不可欠なことだとおもいます。
   たとえば、私たちが時々はレストランに行って、お酒を飲みおいしいものを食べながら、家族や友達とワイワイ騒ぎ気晴らしをする、そういうことと似たようなものだと思います。「楽しかったね」「アアおいしかった」という気持ちが、「明日も頑張るぞ」という気持ちにつながっていくということと似たようなことだと思います。
   こういった、他者とのふれあいの中で、心の健やかさが育まれていくものだと思います。だから、少しからだが動かなくなり物忘れも出てきたから、人前に出られなくなった、いやになったということが、逆にそれらを助長してしまうのではと思います。
   他者とのふれあいは大切ですよ。


Yamamoto福祉・介護研究会
代表 山本亮一
 この福祉のコーナーへのご意見、ご感想、山本亮一さんへのお便りも、編集部あていただければ幸いです。

(編集長 堀川貴子 記)
E-mail : nagi@nagi-web.com

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