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介護保険物語2000年から2004年(1)

   今から4年前介護保険は始まりました。そして、昨年1回目の見直しがおこなわれ、若干の修正がなされています。
   その4年前私の拙い知識で「介護保険 2000年物語」というものを「凪」連載させていただきました。今回はそれを元に、加筆・修正・訂正をしながら「介護保険物語 2000年から2004年」として、久留米セントラルクリニックのホームページに掲載させていただくことになりました。しばらくの間お付き合いください。
Yamamoto福祉・介護研究会
代表 山本亮一

[第1回 2000年4月スタート「介護保険」]

   平成12年4月1日、話題の「介護保険」という新しい法律が施行されました。「保険」というくらいですので、「国民健康保険」や「組合保険」「健康保険」などといっしょのモノだと考えたら少々違います。いっしょなのは、私たちから「保険料」を「徴収」するというところだけです。
   例えば、健康保険では、朝起きて、なんだかフラフラするし食欲もないし、「今日仕事は無理だな」と思うと、医療保険証を持って、いかにも「病人」だと言わんばかりの暗い顔をしながら、近所の医院を訪れます。
   受付をし、診察室に案内されると、お医者さんはすかさず、
   「どうしました、気分が悪そうですね、熱もあるみたいですね?!」などとことばをかけてくれます。
   「朝から熱っぽくって、体がだるくて、食欲もありません」と応えると、お医者さんはかっこいい聴診器に耳を傾け、体の中の音を聞いて、やさしい笑顔を見せながら、
   「ウ〜ン、大丈夫、風邪でしょう、心配ないですよ」と私たちをホッとさせてくれます。そして
   「看護婦さん、念のため採血して、○×の注射をしてね」と益々私たちを安心させてくれます。
   「2・3日して症状が取れないようだったらまた来て下さいね」とやさしくことばをかけてくれ、その○×の注射をうってもらい、薬袋を手に持ち、3割の自己負担金を支払います。
   家に帰る頃は随分元気になり、一眠りすると夕食はモリモリとれるようになります。早めの治療は、不思議なくらいに治りも早いものです。
   ここまでが医療保険のやり方です。ところが介護保険では、そうそう簡単にはいかないのです。
   まず、先にもちょっと触れていますが、保険料は毎月収めなければなりません。健康保険は基本的には20歳以上の国民全員ですが、介護保険は40歳以上の医療保険加入者が保険料を収めます。
   もう少し詳しくいうならば、40歳から64歳までの医療保険加入者は、毎月の保険料に上乗せされての徴収になります。そして65歳以上の年金暮らしの方は、その年金から有無を言わさず天引きされます。介護保険料を天引きされた年金が郵便局や銀行の本人の口座に振り込まれるという仕組みになっています。確実な徴収方法です。国民健康保険のように、徴収漏れや未収金をなくすカンペキな徴収方法なのです。
   よって40歳以上の人はいやおうなしに、医療保険より数段キビシク介護保険料は「お上の手」「お代官様の手」に渡ってしまうのです。覚悟を決めましょう。文句は言えないのですから。とはいうものの、介護を必要とする人たちのために使われるという、目的がはっきりしたお金ですから、文句ばかりも言っておられないのですが。
   さてここからが今回の話のメインです。

   「今日は、具合が悪いので仕事を休んで病院に行こう。そしてお医者さんに診てもらおう」なんてことが簡単にはできないのが介護保険の面倒なところです。
   介護保険も医療保険も、原則は「申請」です。
   自分でサービス(介護や治療)を受けようとする機関(福祉施設や病院)に出向いて、からだの状態を訴えて、その状態に合ったサービス(介護や治療)を受けることになります。そうしないと、サービス提供者(ヘルパーさんやお医者さんなど)が、わざわざ「お困りのことはありませんか」「からだの具合はいかがですか」なんていって、決して様子うかがいに来てはくれません。自分で訴える、すなわち「申請」しなければ何も始まらないということなのです。
   さて、国民皆保険制度(国民健康保険法)は昭和33(1958)年にできています。かれこれ40年以上も経っています。すっかり馴染み深い、ごく身近な制度になっています。医療保険証を持って病院に行くことは「当たり前」のことと思われている方々がほとんどではないでしょうか。このように「当たり前」になるのに40年もかかっているのですから、「介護保険を理解し、自分のこととしてとらえましょう」なんていっても、そうは簡単にはいきませんよね。逆に理解できないのが「当たり前」のことなのです。
   話が横道にそれてしまいました。本題に戻ります。「申請」の話です。
   医療保険では、病気だと感じ、病院に行き、医療保険証を提示すれば、誰でもすぐに最新の医療を受けることができます。そして医療保険証さえを持っていれば、「被保険者」として対応してくれ、医療保険の適応を受けることができます。すなわち、治療費の3割という安い負担金で、世界に誇れる日本の高度な医療を受けられるということなのです。
   ところが介護保険制度では、「脳卒中になり介護が必要な状態になりましたので、介護保険サービスを受けます」といって、介護保険証を見せても、そこに「要介護認定」記載がないと、介護保険の適応にはならないから困ったものです。事前にこの「要介護認定」を受けた方だけが、介護保険の適応になるということなのです。そして要介護認定を受けるためにも「申請」が必要で、その申請して要介護認定の結果が出るまでには約1ヶ月もかかるのです。
   しかし、1ヶ月間もただただ待ち続け、要介護認定の結果が出た後にしか介護保険サービスを受けられないということではなく、申請をした日(申請日)にさかのぼり、介護認定結果を待たずに介護保険サービスを受けることができるようにはなっています。これはありがたいことです。
   しかし気をつけなければならないことがいくつかあります。
   ご存知だとは思いますが、介護保健のサービスを受けた場合の自己負担額は、サービス総額の1割負担だということです。たとえば、要介護1の認定を受けた方が、総額165800円の介護保険サービスを受けたときの自己負担額は、その1割ですので、16580円ということになります。
   ただし、介護保険サービスを受けるためには、介護認定を受けなければならないと先に触れましたが、その要介護認定(要介護度)も、からだの状態によって6の段階(要支援、要介護1〜5)に分けられています。その段階によって介護保険サービスの受けられる内容や総額も違ってくるのです。
   たとえば、「要支援」という介護認定を受けたとします。そうするとその方は、老人ホームなどで、デイサービスなどの通所系サービスは受けることはできます。しかし入所系サービスといわれ、老人ホームなどの施設に入所しサービスを受けることはできません。また、そのサービスの総額は上限が61800円までになっています。それを超えるサービスは、原則として受けられないようになっています。もしその方がそれを超えるサービスを受けたいと思うならば、超えた部分は、全額自己負担(10割負担)となります。
   どういうことかというと、「要支援」の方は61800円までは、1割負担で済むのですが、介護サービスの総額が81800円になったとすれば、61800円までは1割負担ですので6180円ですが、オーバーしている20000円は全額自己負担となり、合計26180円が自己負担額になってしまいます。
   ちなみに「要介護1」の認定を受けた方は、上限が165800円の介護保険サービスを受けることができ、最も重度で介護度の高い「要介護5」の方で358300円となっています。
   しかしこの認定で、「自立」と言う認定を受けた方は、介護保険サービスの適応外となり、そのサービスは原則受けられないということになります。

次回は、「要介護認定」についてのお話をしたいと思います。

 この福祉のコーナーへのご意見、ご感想、山本亮一さんへのお便りも、編集部あていただければ幸いです。

(編集長 堀川貴子 記)
E-mail : nagi@nagi-web.com

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